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そのキスの代償は……
第2章 その想い
実は…

私自身も実父は幼い頃にいなくなってしまい…

妹と二人、女手一つで育てられた。

母は私たちを育てるためにただ懸命に働いた。

それこそ身も心も擦り切れそうになりながら…


だからこそ、結婚する相手を選ぶことには慎重なはずだった。

今時だからお見合いじゃなくそれなりに恋愛をしてからだったけど、

夫になった人は、穏やかで優しいはずだった…

酒も女も賭け事もしない真面目な人で

会社経営していた義父母の次男だった。


母親一人の収入と寡婦手当で育ったから、

貧しいことの辛さは痛いほど知っていた。

学校に行っていた頃は、長女であっても誰かの

お下がりの服や学用品を使っていた。

父の日や、両親について作文を書けと言われると、

口をつぐんで俯くしかなかった。

私達姉妹の世界には父親は存在しなかったから…

それでも母は一生懸命私たちの事を育ててくれたと思う。

だから、私は母に心から感謝している。


しかし、反面母と同じ轍は踏まないようにしようとは思っていた。

相手を間違えれば、しなくてもいい苦労をすることになるのだから…

それなのに…

そのはずなのに…

私も母と同じように、結局夫と離婚してシングルマザーになった。
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