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そのキスの代償は……
第2章 その想い
私はその夜、意を決して会社の飲み会の後、

いつものようにあの人と同じタクシーに乗った。

そして、タクシーを降りたあの人を…

追う。

その夜しかチャンスがなくって…

もうこれ以上待つ自信もなかった。


「「「「「かんぱーい!!」」」」」

男たちはその夜もご機嫌だった。彼等にとっては、月に一度のお楽しみ。

普段真面目に仕事をしている者も、それなりの者も、

酒が好きな人間はこの時ばかりとただはしゃぎ酒に呑まれる。

でも私には仕事の一環で、飲むことはあっても

飲まれるわけにはいかなかった…

お酒の席でも、この課で女一人の私はいつも入り口近くの末席で

何かと気を使わなければならなかったから…


だからできる限り娘達を1泊で実家の母に預け

この飲み会に参加することにしていた。

それでもそれなりにこの飲み会を楽しむことにしていた。


ただ…

今夜の飲み会は拷問だった。

朝から高揚した気持ちが鎮まることはなく…

少しの酒で高ぶってしまう。

普段あまり飲まない私が、今夜はいつもの倍以上のアルコールを

躰の中に流し込んだ。

「相良さん、今日はやけにノリがいいねぇ~。しっかり付き合ってよ~」

同僚に声をかけられ、私は微笑みながら目の前の酎ハイを煽った。


バクバクという破れんばかりの心臓の鼓動を、

全部このアルコールのせいにしたかったから…
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