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そのキスの代償は……
第1章 プロローグ
あの人は鞄からカギ束を取り出し、鍵穴に挿しこむ。
手首をひねってカギを回すと「ガチャ」っと大きな音がする。
それと同時に心臓がビクンと跳ねた。
「今なら…
まだ、間に合うぞ」
あの人はドアを開け一歩中に踏み込んで暗闇の中から私をねめつけた。
目が徐々にその暗闇に慣れてきて…
浮かび上がる白い瞳に釘付けになる。
その時右眉がくいっと上がった。
あの人の表情に怯む気持ちを…
頭を振って奮い立たせる。
もうこの気持ちから逃げない。
私は黙ったままドアの中に一歩足を踏み入れた。
「俺は人間の感情をとおの昔に捨てた…
文字通りただ、雄としてお前を抱く行為しかできない」
あの人はそれから一呼吸置き、
「それ以上の何かを、俺に求められても…
それは無理なはなしだ」
やっとのことでここまでたどり着いた私にとって、その一言は…
残酷な宣告だった。
やっと自由になったのに…
やっと自分の気持ちに向き合ったのに…
やっと正直になれたのに…
その結果がこれ?
それでも私は、その残酷な宣告を受け入れるしかないと瞬時に思った。
口から溢れ出そうな胸に秘めた感情を飲み下し、
「…はい」
と応える。
手首をひねってカギを回すと「ガチャ」っと大きな音がする。
それと同時に心臓がビクンと跳ねた。
「今なら…
まだ、間に合うぞ」
あの人はドアを開け一歩中に踏み込んで暗闇の中から私をねめつけた。
目が徐々にその暗闇に慣れてきて…
浮かび上がる白い瞳に釘付けになる。
その時右眉がくいっと上がった。
あの人の表情に怯む気持ちを…
頭を振って奮い立たせる。
もうこの気持ちから逃げない。
私は黙ったままドアの中に一歩足を踏み入れた。
「俺は人間の感情をとおの昔に捨てた…
文字通りただ、雄としてお前を抱く行為しかできない」
あの人はそれから一呼吸置き、
「それ以上の何かを、俺に求められても…
それは無理なはなしだ」
やっとのことでここまでたどり着いた私にとって、その一言は…
残酷な宣告だった。
やっと自由になったのに…
やっと自分の気持ちに向き合ったのに…
やっと正直になれたのに…
その結果がこれ?
それでも私は、その残酷な宣告を受け入れるしかないと瞬時に思った。
口から溢れ出そうな胸に秘めた感情を飲み下し、
「…はい」
と応える。