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そのキスの代償は……
第3章 その情事
暗闇に目がなれた頃、立ったままのあの人の目に射すくめられ…

私はゆっくりと後ろ手でドアをしめた。

とたん意地悪い微笑みを浮かべながら大股でこちらに寄ってくる。


無言のまま乱暴に私の両手首を掴み、ガンとドアに押し付け…

両足の間に、自分の右足をグイっと割り込ませる。

私はその行為に驚きながら瞳を閉じ見える世界を自ら断った。


職場で飽きるほど目に焼き付けた…

だからここでは、あの人をそれ以外の感覚全てで感じたいと思った。


それから割り込ませた膝の上に私を跨らせ、

たやすく宙に浮かせ動きを封じてから強引に唇を塞ぐ。


口で息をすることを断たれて、鼻から思いっきり吸い込むと

鼻腔にいつもの煙草とフレグランスの混じった匂いが満ちる。

その香りが私の欲望に火を着けた。

下腹部に力が入り、溢れる感覚がした…


「クチュ、クチュ、ジュッ…」

何度も卑猥なリップ音をわざと聞かせるるように響かせる。

一瞬目を開けると、唇をほんの少しだけ離してあの人の右眉があがった。


腰を突き上げぐりぐりと硬いソレを押し付けてきて、

そっちに意識を取られそうになると、また私の口の中をまさぐる。

「くちゅっ、ぐちゅっ」

という蜜音と自分の心臓のバクバクという鼓動だけが耳に響く。


あの人はそうやってしばらくの間貪るように私を味わった。
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