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そのキスの代償は……
第3章 その情事
やっと唇が離れ、酸素を欲した体が息を吸い込もうとしたとき

「限界だった…」

ため息のようにも聞こえるその余裕のない呻きが、

あの人の唇から漏れる。

それから私たちは躰だけでなく、お互いの瞳を絡め合わせた。

その瞳に凶暴な炎が灯ったと思った瞬間、

「お前を見て、お前の声を聞ける距離にいるのに…

触れられないのは…

抱けないのは拷問だ」

吐き捨てるように言うと、唇が噛みつくように首筋に吸い付き、

背中に回された手がせわしなくうなじをはい回って何かを弄る。


手が止まった次の瞬間ジーーっという高い音とともに

勢いよく降ろされたそれで、

私の躰は一気に衣服の締め付けから解き放たれ、

背中から冷たい外気に肌が曝される。

床に落ちたそれを気にすることもなく私はその場に立ち尽くしていた。


「はぁあ―――」

解放の溜息なのか、それとも息継ぎのための叫びなのか

私の口から甘い声が零れた。


あの人は跪いて私に絡みつくように抱きつき、

私の胸のふくらみに顔を埋めながら擦り付けてきた。

上目使いの艶っぽい視線をこちらに向けながら

「さあ、魅せてくれ。お前のそのなまめかしい痴態を…

聞かせてくれ。その躰の欲する叫びを…」

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