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そのキスの代償は……
第3章 その情事
「こういうのもいいだろ?」

あの人の指が私の掌を絡め取り、口元から剥がす。

それからこちらに向かってほくそ笑みながら、

再び唇が足の指間を彷徨う。

その執拗な舌の動きは、こらえていた嬌声を暴き出してしまう…


「あぁ…

いやん。やぁあ…」

こういうのって言われても…

私はぬらぬらになりながら変貌する自らの足の指を

目を細めながら見つめた。


一通りのことは知っているつもりだった私は…

本当に大バカだ。


この人の繊細な指先の動き、手慣れた愛撫…

いったいどれだけの生身の女を蹂躙してきたのだろう…

多くの女との交わりをうかがわせるこの人の抱えるものは深いのだろうか?

私では到底太刀打ちできる相手ではないのに…


理性では、こんなことオカシイってわかってる。

一度きりにしたはずの情事に、自ら望んで再び身を投げ出すなんて、

絶対に狂ってる。

それも、こんな三十路を越えたいい年のオバサンが、

躰を持て余して今更セックスの快楽にどっぷりとはまり込もうとしている。

自分の躰のくせに知らないことだらけで

子どもを二人産んだからって、全くのネンネだったなんて…

でももう後に引くことは許されない。
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