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そのキスの代償は……
第1章 プロローグ
パーソナルスペースにすら踏み込んだことにないオトコと

突然行きつくところまでスル…

それは私にとって前代未聞のこと。

でも飛び込まない限り、永遠にこの想いは昇華されない…

それには交わるのがイチバンだと思った。


「本当にいいんだな?」

もう一度同意を求めるあの人に頷くと、

最後の躊躇は乱暴な掌の中に握りつぶされ、

反射的に覆いかぶさるものを避けようとねじる躰を

嘲笑うかのように押さえつけた。


絡む強い視線に怯えながらも、自らの意思で躰をその熱に押し付ける…

それは私の覚悟だった。

躰に当たる欲望の証。服を通してもわかるその硬さと大きさに

驚愕していたら…

激しい口づけが感覚や思考の全てを再び奪い去った。

塞がれる唇。クチュクチュといやらしい音をたて絡まる舌。

私は息をするのも忘れ、ただ夢中で貪った。


ああ、欲しかったモノが戻ってきた…

温かい躰に翻弄される快感。躰の隅々までその感覚に痺れる。

そうやってどのくらいお互いの体液を混ぜあっていたのだろう…

気が付いたら私の口の端からだらしなく液体がこぼれていた。


そして、あの人が私から唇を離そうとすると、

未練がましく銀糸がゆっくりと伸びながら二人を繋ぐ。

まだ離れたくないとばかりに…


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

お互いに声にならない荒く甘い息だけが静かな玄関に響く。
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