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そのキスの代償は……
第4章 その事後
何も変わらない朝。あの人は何も変わっていない。

そして、私自身も何も変わっていないはずなのに…


目にする全てのものが違って見えてしまう。

感じること全てがあの人に繋がってしまう。

どこにいても、何をしていても、あの人の事をふと考えてしまう…


私はあの人に囚われてしまったのだろうか?

あの人のくれる快感に溺れてしまったのだろうか?

今までこんな経験のない私は、ただただ困惑するしかなかった。


そして、そんな感情を持て余していることを、誰にも…

娘や、母。

何よりあの人に知られたくなかった。


新たなマグを手にお湯を注ぎコーヒーを入れる。

そろそろ、こっちのカップの人もいつもなら出勤するはず…

私はその何も入っていないカップに白湯を注いだ。


それからコーヒーを入れたカップをトレーに乗せる。

飲み物を手にして…

持って行かなければいけないのに、また大きなため息が零れた。


その時突然ノブが動き、目の前のドアが細く開き始めた…

何も悪いことをしているわけではないのに、その様子に驚き

思わず後ずさり心臓がドクン!!と飛び跳ねた。

手にしたトレーのバランスが一瞬崩れたが…

なんとかそれを立て直す。
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