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第5章 その心

いつの間にか集中が途切れ、つい物思いにふけってしまう…

目の前の本の文字に再び目を落した。

今日わからなかったところだけでも、きちんと理解しておかなければ

明日困ってしまう…

明日できなければ、進捗が遅れ、段々と後へ後へとずれこんでしまう…


気持ちを入れ直して文字を追い始め、他の事は無理矢理頭の隅に押しやり、

なんとか解ろうと脳をフルに回転させる…


今まではただ突っ走るだけだった人生。

娘達と何とか生きていくために、元夫から身を守るため…

だた無我夢中で、目の前を何がが通り過ぎても気が付く余裕すらなかった。


それなのに、今まで絶対に冒したことのない世界に

衝動的に自ら飛び込んでしまったことで…

目の前が一気に開けて、その景色の違いに驚き戦いて…

思わず立ち止まってしまった。


あの人の事は、転勤してきたときから気になっていた。

どうしてなのだろう…

すごく昔、付き合って捨てられた男に面影が似ていたからなのだろうか？

その人は、一言でいうと私の手には負えない人だった。

それでも今でもたまにその人の事を思い出すような…

忌々しいが気になる人だった。


別れ方が悪かったのだろうか？

何に未練があったのかは未だにわからないのに…