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そのキスの代償は……
第5章 その心
その躰を腕に閉じ込めたまま、頬をすり寄せてギュッと強く抱きしめる。

彼女の中に、又かおるを見つけてしまった動揺を隠し、

俺自身のもやもやとした気持ちを誤魔化すための行為。


「浴びたいか…?」

耳元に唇を寄せ、チュッと耳たぶに口づけてから低い声色でそっと囁いた。

抱き締めた躰がぞくっと震える。それから少し間があって…

頭が縦に1度下がった。


「一緒なら…

いいがな!!」

耳元にある俺の口角が上がる。さあ、どう返してくる?


予想通り首を何度も左右に振って俺の胸を押し、もがき始めた…


そういう行為が、余計に男の欲情に火をつけるって

お前はわかってるのか?

無意識ならこの女は本当に…

クククッとほくそえみながら、俺はそのまま彼女を抱きかかえ

肩に乗せた。


「行くぞ?」

それは疑問ではなく決定。

腕力で俺にかなうはずない彼女なのに、

それでもバスルームのドアの前まで肩の上で足をバタつかせ続けた。


腕で彼女を押さえつけながら、歩く。

彼女といると…

苦しみと喜びが混ざり合って一度に起こる。


彼女は俺にとってびっくり箱のような女…

でもこの関係はあくまでもひと時の情事でしかない。

何よりもそのことが…


考えるのをやめバタつく彼女を抱えたまままバスルームのドアを開けた。
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