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雨と殻
第1章 霧雨
◇2◇
声をかけた相手は、一目見ただけで「抱かれたい」と思うような、顔をしていた。これまでは抱いたことしかなく、抱かれる悦びなど知らなかった、私なのに。
教えられた呼び名は、何度も噂で聞いたものだった。
黒。
決して雌にならない者。
乳房を丁寧に撫でられ、頂を転がされ、うっとりと溶けそうな心地。
背中にまわった手が、肩甲骨に沿って滑る。
「えっ、ぁっ……!?」
ただ背中を撫でられただけで、なぜか腰がうずいた。
目ざとく気付いた黒が、私の片腕を背中へひねり、肩甲骨を浮き出させる。
片腕の自由を奪われとまどう私の、肩甲骨のくぼみを、黒は指で執拗になぞる。
「あ、ぁ、ぁ」
小刻みに声が漏れる自分に驚く。
乳首を甘く咬まれ、目眩がする。同時に背中を走る刺激に、脚が跳ねる。その脚を捕らえ、黒は足指に唇を這わせる。
「ひっ」
思わず息を吸い込む。
急に置いてけぼりを食った乳首と背中が、じくじくと熱を増す。
熱い舌でなぶられる左足。屈強な手のひらが這いのぼる右脚。
右脚の付け根まで一気に昇っては、足首の骨を突つく、を繰り返す黒の手。
その指が付け根をかすめる度、腰を上げ追いすがってしまう。
やがて右の足首も持ち上げられ、足指を食まれた。
左足は黒の肩に乗り、その琥珀の肌を踏みつけている。
美しくたくましい者を、足下にしている……その背徳感、いや征服感だろうか……に、一瞬、雄としての血が悦んだ。
不意に、黒の口が笑んだ。
両足を高く掲げられた姿勢のまま、正面から、奥深くまで一気に突かれた。
「――――ッ……!!」
声も出なかった。ような気もするし、大声で叫んだような気もする。
たった一突きだけで、黒は抽送を止め、性器を引き抜いた。
頭が事態を飲み込めていない間にも、取り残された私の性器は、刺激を求めひどく痙攣する。
霧雨か自分の涙か、潤んだ視界の中で、黒が私を鋭く見つめていた。