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雨と殻
第1章 霧雨

◇3◇

もっと。
声や言葉が無くとも、自分を求めていることが明白な相手。
目の潤みが、上気した肌が。
苦しげな吐息が、水音をたてる性器が。
もっと、触れて。
もっと、揺すって。
求められるという快感。それに応える快感。

快感に優劣はあるのだろうか?



……もどかしさに、気が狂いそうだ。
思いながら、必死にささやく。
「く、黒……」
「うん?」
四つん這いになった私の横に座り、背中と乳房を撫でまわす手を休めぬまま、黒は応える。
私の脚の間を濡らすのが、雨粒ではないことに、黒はとっくに気付いている。
「あ、胸、痛かった?」
手が離れる。
「……じゃ、なく、て」
言っている間に、黒は寝転がり、私の腕の間に頭を差し入れた。

「なくて?」
言うだけ言って、答えを待たず下から乳首を吸う。
「っはぅ」
背中がしなり、尻が突き出る形になる。
肩から腰へなだらかにくびれ、尻に向かい急角度に跳ねる曲線。
その美しさは、何度見ても黒を感動させる。
喘ぐ相手の唇に自分の指を含ませ、唾液で潤ませると、黒はその指を相手の性器へ伸ばした。

「きゃぁあ――ぅうッ!!」
二度目の絶叫。かすれた高い声は、霧雨に吸われて溶けていく。
今にも気絶しそうな表情で、泣きそうな目は、それでもこちらをしっかり見つめてくる。
なかなかに、そそる。
身体を起こし、白い背中に覆いかぶさる。
挿れようとした瞬間、かすれた声が言った。
「……んで」
「ん?」
「呼んで」
「……なんて?」
「……ぎょく。玉、です」
「……」
あえて無言で、身体を寄り添わせ、性器を性器にあてがう。
「……」
呼び声を期待する気配を、さらに無視して、性器を浅く挿す。
びくりと震え、とうとう悲しげにうなだれた白い相手。
その首筋に唇を落とし、耳元でささやく。
「……玉」
そして奥まで進入した。
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