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雨と殻
第2章 天気雨
◇5◇

霞の唇は、耳を甘噛みしはじめた。手はようやく乳輪に届いたが、乳首にはかすりもしない。
性器のうずきと乳房の満たされなさから、曇は耳からの快感を必死で追いかける。
背を撫でる手は動きを広くし、うなじや肩甲骨も丹念に撫でる。
と、霞の唇と指とが、曇のうなじで合流する。
爪が軽く滑ったあとを、唇が柔らかく吸い、舌がなぞる。
曇は無自覚に、肩を小さく震わせていた。

「……くすぐったい?」
「ひぁっ」
耳元で突然ささやかれた声に、曇は驚いて情けない声をあげ、赤くなる。
「……くすぐったくは」
ない、と続ける前に、乳首を柔らかく弾かれる。
「――っ!!」
声も無くのけぞった背中を、しなやかな指が走る。
背中からまわされた掌が、性器を包みこみ圧迫する。
「ぁっ……は、ぅ」
遠巻きな愛撫から一転、待ち望んだ場所をこれでもかと刺激される。
霞の舌に撫でられるたび、乳首が溶けていく錯覚さえ起こる。
性器というのは、交接無しにこんなに甘くしびれるものだったろうか?

「……かす、み」
「……うん?」
いつの間にかゆるやかに押し伏せられ、仰向けで喘ぎながら、曇は呼んだ。
「どうした?」
「……もう」
「……つながりたい?」
うなずく。
「そうか」
乳首を転がしていた舌が、鎖骨と首筋を経て、唇を捕らえる。
のびあがった霞の上体の重みが、曇の身体に優しく沈む。
「勿体ないけれど……」
含み笑いをしながら、霞は言った。
曇はその意味を問いたかったが、霞に侵入されると、それどころではなくなってしまった。
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