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トラワレテ…
第3章 不覚
守衛に軽く手をあげ、ビルを出た馨は大通りを挟んだ向かい側のタクシー乗り場へ向うため、少し苛立った感じで信号が変わるのを待つ。

そんな姿を横目でチラチラ見ながら、遊び帰りであろうOL達が囁き合う…

「ね〜、ちょっとあの人カッコイイ〜…///」
「ほんとだ!!ヤバイ〜…///」
「っはぁ…キュンキュンするぅ〜…///」

馨が眉間にシワを寄せながら、無造作にネクタイを緩めるその姿は、実に妖艷である…。

そんな姿を見せられた女は皆、本能的に熱い溜息を漏らしてしまう…。

こんな事が日常茶飯事の彼は、気に留めることもなくタクシー乗り場の前にあるコンビニに立ち寄った。
「○○○1つ」
レジ横のライターをつまみあげながら言う。

ここ最近の悪い癖である。
とうの昔に止めたはずのタバコに、イライラした日はついつい手が出てしまう。


「フゥーーー…」

美味そうに煙を吐きながら、タクシー乗り場に目をやると、先に女が1人待っている。

(仕方無い。ちょっと歩くか…)

そんな事を考えながら何故か彼女の後ろ姿から目を離せずにいた…



タバコを消し、歩きだそうと目をあげた瞬間、
視界の端で傍にあるポールに手をつき、ヘナヘナと倒れ込む女の姿が目に入った。

「ぅわっっっ!と…」

反射的に倒れ込む彼女の身体を支える。

「っ!ちょっと!キミ、大丈夫?!」

思わず覗き込んだ女の顔は真っ青だ…

「……み……せ…ん…………。」


(酒くさくはないな…貧血か?!)


キッーーーッ!

ちょうどそこへ1台のタクシーが滑り込んできた。

思わず、開いたドアと真っ青な女の顔を見比べた。

「チッ!クソっ!!」

女のものと思しき鞄を拾い上げ、後部座席に投げ入れる。

女を抱き上げ流れるようにタクシーに乗り込んだ。





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