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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第27章 切なすぎる夜
二人はそれとは判らぬように質素ななりに身をやつし、鎌倉の町を少し歩いた後、由比ヶ浜にやってきた。弁当の包みは頼経が持ち、瑶子は頼経の傍らを並んで歩いた。ここに来ればいつものこととて、瑶子は草履を脱ぎ捨て、海水に脚を浸して無邪気に歓ぶ。そんな妻を頼経は優しい眼で見守る。
「もう予定日も近いのに、脚を冷やしては良くないのではないか?」
流石に心配になった頼経が声をかけると、瑶子は弾けるような笑顔を向けた。