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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
床に突っ伏している中に、涙が溢れてきた。楓は十六歳。この鎌倉で生まれ育った。父河越次郎恒正は〝鎌倉どの〟と呼ばれ崇められる征夷大将軍源頼朝の側近中の側近。頼朝の舅であり妻の政子の父である大物北条時政とも懇意にしている。
その時政の庶子の中の一人、五男だか六男だかとの縁組みを恒正が持ち出してきたのは、そもそもみ月ほども前のことだった。最初は冗談か何かと思っていたのに、何と父は主君頼朝に頼み込んでまで、時政の倅との縁談を進めたかったらしい。
その時政の庶子の中の一人、五男だか六男だかとの縁組みを恒正が持ち出してきたのは、そもそもみ月ほども前のことだった。最初は冗談か何かと思っていたのに、何と父は主君頼朝に頼み込んでまで、時政の倅との縁談を進めたかったらしい。