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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第35章 対決~将軍と執権~
「何か私が御所を訪ねてはならぬような物言いだな。用済みの前将軍がここに来ては迷惑か?」
温厚な頼経のいつになく挑発めいた物言いに、経時は細い眼をみはった。だが、動揺が面に出たのはほんの瞬時のこと、すぐに大海に投げ込まれた小石のごとく凪いだ見せかけの笑顔の下に消えてゆく。
「何を仰せになりましょうや、前(さきの)大納言さまは引退なさったとはいえ、幕府にとって大切なるお方というのは、これ変わりなく」