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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第35章 対決~将軍と執権~
頼嗣は唇をきつく噛みしめ、千草に背を向けた。わずか数歩の距離を歩くどころか、最初の一歩を踏み出すことが今の自分には苦痛でしかない。けれど、愛しい女にここまで言わせて、男としてこれ以上、何をどうすることもできなかった。
頼嗣は一歩一歩、ありったけの意思の力をかき集めて脚を動かした。傍から見れば、それは随分と滑稽なぎごちない歩き方に見えただろう。それほどに千草から離れるのには不動の意思の力を必要としたのだ。