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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
結局、呼ばれた薬師の手当を必要としたのは将軍ではなく倒れた側近の方だったという笑えない話もある。むろん、当の頼嗣は猿のように器用にするすると樹を降りてきた。
その後、頼嗣は父から叱られた。
―馬鹿者、将軍たる者が猿のように樹登りするとは何事か。
しかし、大宮どのは頼嗣にこう言った。
―そなたに樹登りを教えたのは母ゆえ、叱ることは致しませんが、今後、仕えてくれる側近を無闇に心配させぬよう気遣いは怠ってはなりませぬぞ。