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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
「いいえ」
 正直に応えると、頼嗣は眼を心もち眇めるようにして千草を見つめた。そこで、〝あ〟と声を上げる。
「菫を一夜草というのは、頼嗣さまが先刻、教えて下された和歌と拘わりがあるのですね?」
 頼嗣が我が意を得たりと頷く。
「流石は千草だ。察しが良い」
 そこで、千草は浮かんだ純粋な想いを口に乗せた。
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