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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
「春の野に すみれ摘みにと 来し我ぞ 野をなつかしみ 一夜寝にける」
 囁きにも似た声で突如として告げられた歌に、千草は眼を瞠った。
「それは〝万葉集〟ですね」
  
―春の野に すみれ摘みにと 来し我ぞ 野をなつかしみ 一夜寝にける (山部赤人)
「菫の花を別名〝一夜草(ひとよぐさ)〟というそうだ。知っていたか?」
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