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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
 その物言いがおかしくて、千草はつい笑った。
 頼嗣が少し得意げに言う。その表情はまるで母親か姉に褒めて貰いたい子どものようだ。しかし、今度は込み上げた笑いを抑え込んだ。
「菫の別名はまだ他にもあるのだぞ」
「まあ、まだあるのですか」
「うん、二夜草(ふたよぐさ)という別の呼び方もあるんだ」
「二夜草―。一夜ではなく、二夜なのですね」
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