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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
「あのときは私、折角、頼嗣さまが褒めて下さったのに、ずっと違うって頑固に意地を張り続けて。本当は、こんな私でも菫に似ていると言われて、とても嬉しかったんです。でも、素直になかなかなれなくて。意地っ張りで、ごめんなさい」
 頼嗣の整った面に優しい笑みがひろがる。まだわずかに少年らしさを残しているが、その面立ちは彼が既に大人の階段を上り始めていることを示していた。頬の幾分ふっくらとした輪郭がすっきりすれば、父頼経に生き写しになるだろう。
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