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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
「そう申せば、今月の初め、頼嗣さまと町に出た時、小間物屋から櫛を頂きました。あの櫛にも菫が描かれていて、頼嗣さまが花売りのお婆さんから買って下さったのも菫でした。あの時、頼嗣さまはおっしゃいましたね」
―菫は、そなたにふさわしき花だな。
 千草の頬がうす紅くなった。
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