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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第5章 源氏の一族
 時繁はそれからしばらく寝転んで眼を瞑っていた。眠っているのではないことは判っていた。思案の邪魔をしてはならないと楓は傍らで直垂を縫い続けた。
 唐突に時繁が眼を開いた。彼は身を起こし、〝楓〟と妻の名を呼んだ。
「お前はどうしても俺と離れたくないと?」
 楓はコクリと頷いた。
「あなたさまにいつか申し上げました。たとえ、あなたが私に飽きて出ていけと仰せになっても、私は出ていきません」
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