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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
「名は千種と申したか」
「は、はい」
 千種は上擦った声で応える。既に千種自身のことは誰かから聞いて予備知識として知っているのかもしれない。
「そのように固くならずとも良い。千種、私は楓をよう知っておるのよ」
 聞き憶えのない名前に、千種は首をひねる。
「楓―?」
 訝しげな声で気付いたのか、政子が薄く笑った。
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