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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
「そう申せば、そなたは楓に逢うたことはないのであったな」
 そこで、千種は閃いた。
「私の父の従妹に、そのような名前の方がいたとは聞いたことがありますが」
 政子は明るい笑顔で頷いた。
「そうじゃ、朗らかで笑顔の似合う娘じゃった。今頃、どこでどうしておるものやら。楓のことゆえ、いずこかで生きておるのであろう。我が娘同然とも思うた楓が野垂れ死んだなどとは今でも信じとうはない」
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