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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
 元どおりに身仕舞いを整え、千種は政子を真っすぐに見た。
「畏れ多くも将軍家に嫁ぐ身にこのようなアザがあっては申し開きが立たないのではございませんか?」
 このアザが逆にこの難題を断る理由にならないかと、かすかな期待を込めたのだけれど。
 その気持ちを察したかのように、政子は淡く微笑した。その何もかも知り尽くしたような表情に、千種は我が身の迂闊さを知った。
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