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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
つい三ヶ月前には極楽のごとき花を咲かせいた蓮池に浮かぶのは枯れ花だけ、その上に細やかな雨が降り続いている。まるでその池の無残な姿に、これからの自分の姿を見るような気がして、千種はそっと眼を背けた。
ふと視線を転じた先に、紫式部の花がひっそりと咲いていた。丁度、渡殿から庭まで続く短い階(きざはし)の傍、小粒の薄紫の実を一杯につけ、愛らしい花を咲かせている。千種には、その可憐な花が秋雨に打たれて、泣いているように見えた。見るともなく見入っていると、背後から声がかけられる。
ふと視線を転じた先に、紫式部の花がひっそりと咲いていた。丁度、渡殿から庭まで続く短い階(きざはし)の傍、小粒の薄紫の実を一杯につけ、愛らしい花を咲かせている。千種には、その可憐な花が秋雨に打たれて、泣いているように見えた。見るともなく見入っていると、背後から声がかけられる。