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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
「嫁ぐのがいやだから、家出してきたのです」
「なるほど、こいつは訊くのが野暮だったな」
 男がまた少し笑った。ドキン、と、また楓の胸が高鳴る。
 何故、私はこの男の素敵な笑顔を見ると、ドキドキするのかしら。そこまで考え、ハッとする。素敵? この無礼な男が素敵ですって―。
 楓が一人で紅くなったり蒼くなったりしているのも知らぬげに、男は人懐っこい笑みを見せた。
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