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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第11章 見知らぬ花婿
 男は早足で歩くので、小柄な千種は付いてゆくのに精一杯だ。ややあって、小さな声で言ってみた。
「あの」
「何だ?」
「もう少し、ゆるりと歩いては頂けませんか? それに、手が痛いのです」
「そうか?」
 男は愕いた表情で、慌てて千種の手を放す。掴まれた手首には、くっきりと紅い跡が残っていた。
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