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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
 楓はその時、抱えていた疑問を彼にぶつけた。
「時繁さま、一つだけお訊きしても良いですか?」
 ブッと彼が吹き出した。
「時繁さまア? いや、済まない、そんなご大層に呼んで貰ったことがないんで、愕いた」
「時繁というのは本当の名前なのですか?」
 それは直感的に感じた疑問だった。名を訊ねた時、彼は明らかに別に名前を言おうとしていた。そこで言い淀み、時繁と応えたのだ。
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