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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
「海の底に棄てた?」
「ああ、とっくの昔に棄てた。名前だけでなく、その名前で生きていたときの人生もすべて、波の下に棄てて生まれ変わったんだよ。今の俺は時繁。だから、あんたもそう呼んでくれ」
 消え入りそうな語尾が絶え間なく続く海鳴りに混じって消える。楓は何も言えず、ただ寄せては返す白い波を見つめていた。
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