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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第12章 逢瀬と初夜の真実
 指をさす方向には、あの中年の人のよさげな小間物屋がいた。今日は店を出しているようで、男の前には低い台が置いてあり、一面に所狭しと女の歓びそうな小間物が並んでいる。
 男は千種の手を引っ張っりながら叫んだ。
「そこの者!」
「ああ、いつぞやのお二方にございますか」
 丸顔をほころばせ、小間物屋は丁重に頭を下げた。
「髪飾りが欲しい。先日、そなたが千種に贈った組紐より数倍も見事なものをくれ」
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