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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第12章 逢瀬と初夜の真実
「私には」
 そこで言葉が途切れた。言うなら、今この瞬間をおいてしかない。いつまでも隠し通せるものではなく、また、将来ある身の彼を共にいたとしても未来のない自分のような女に引き止めておくこともできないのだ。
 そう、夢はいつか醒めるときが来る。千種は深呼吸した。
「―良人がおります」
「―!!」
 刹那、男の貌が強ばった。伸ばそうとした手が宙をかき、虚しく落ちた。
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