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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第12章 逢瀬と初夜の真実
 千種は涙を堪えて懸命に笑顔を作った。
「申し訳ございませんでした。どうしても申し上げられなかったのです。あなたと過ごす刻があまりにも愉しくて、我を忘れるほどに。私もこの歳であなたさまが初めてお慕いした方でした。何と申し上げてもお詫びはできませんが」
 千種は男の貌を見た。品のある端正な面立ち、この貌を永遠に忘れないように記憶にとどめておこう。彼と過ごしたわずかなひとときをこれから生きてゆく余生の宝物にしよう。
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