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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第13章 藤の舞
「私は、そなたに逢いたくて仕方なかった。そなたはどうだ?」
 期待に満ちた瞳に、千種は吹き出した。
「私は」
―あなたが〝藤の前〟をご寵愛なさっておられると聞いて、醜い嫉妬に身を焦がしておりました。
 心で呟き、艶やかに微笑んだ。
「私も淋しうてなりませんでした。いつぞやは夢に御所さまのお姿を見ましたもの」
 夢は夢でも、とんでもない夢だが、この際、嘘も方便だろう。
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