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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第4章 嵐の夜
 町に出たいときには、よくその穴を利用したものだ。もっとも、小柄な楓ならばこそで、大人の男なら通れないだろうが。そして、その抜け穴の存在は父も知らない。普段は生い茂った低木に隠れて見えない位置にあるのだ。
 抜け穴から屋敷を出て、そのまま町を通り抜けて浜辺まで来たのだが―。当の時繁は確かにここで待っていてくれたものの、楓と再会しても嬉しそうどころか、迷惑そうに見えた。
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