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知らなくってもいい性
第19章 それでも

家に帰るとやはり妻の気配はなかった。

昨日さんざん悩んだのに、
やっぱりユイちゃんに別れ話は言えず、のこのこと家に帰ってきてしまった。

独身時代は一人暮らしだってしてたのに、誰もいない家がこんなに寂しいものだとは思わなかった。

出張だと嘘をついて外泊したとき、あいつもやはり寂しいと思っていただろうか?


とりあえず、飯にしよ。
何の匂いもしない台所に向かう。

なんか買ってこれば良かった。と思いながら、棚の中を漁るとポロリと何かが落ちてきた。
サプリメントの袋だ。
「葉酸」と書かれたそれは妻がいつも飲んでいたものだった。

「子供がいつできてもいいように体調整えておこうと思って。」
だいぶ前にそんなことを言っていた。

結婚当初、お互いに早く子供が欲しい。と話していた俺達だったけど、なかなか恵まれず、半年ほど前から少しずつ空気が悪くなっていった。

俺は...周りがどんどんパパになっていくのを見て、なんだか焦りを感じていた。もう30歳も過ぎてるのに俺だけ置いてけぼりのような気がした。

ある時、仕事から帰るとマキがネットで不妊治療のサイトを見てて、「産婦人科に行こうと思って。」と話したことがあった。

俺はちょうどその時、仕事で大きなミスをしてて、かなり苛ついていた。

産婦人科ってなんだよ...
俺らは医学かなんかに頼らないと子供もできないのかよっ!
周りは普通にできてるのに、なんで俺ばっかり!!

そんな思いが駆け巡ってついマキに怒りをぶつけてしまった。

マキに八つ当たりをした...

それから、会社で落ち込んでた俺にユイちゃんが優しく励ましてくれて。
つい、そのまま浮気の関係にまで発展してしまった。
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