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知らなくってもいい性
第22章 救われた

「あれ?マキじゃん。今帰り?」

「!!..」

突然現れた彼に何を言えばいいのか分からなかった。

「俺は今日ここらでタメと飲み会。
そっかぁ、マキの仕事場ってこの辺なんだ。
っていうか、どうした?
なんか元気ない?」

その頃の私は恋愛経験などまるでなく、初めてできた彼氏であるマサヒトへの甘え方も知らなかった。

「いや...ちょっと...」

「...」

「...」

「...」

「...。」

「いいや。飯でも食いに行かない?」

「えっ!?友達と約束してるんじゃ?」

「いいよ。ほぼ毎週飲んでるやつらだし、たまには。

それにこの前、お前ん家で美味い飯ご馳走になったしさ。お礼したかったし。」

「えっ、いや、でも...」

「いいって。行こ行こ。何があったか分かんないけど、美味い物食えば、また元気になるって。」

私の背中を軽くバンバン叩きながらマサヒトは明るく言った。

次の電車に乗って大きな駅に着くと、マサヒトのお勧めだという焼き鳥を食べに行った。

本当に美味しかったし、
本当に嬉しかった。

マサヒトの気さくな優しさが本当に嬉しかった。何も聞かずに暖かく包み込んでくれた。

マサヒトは沈んでいた私を助け出してくれた。あのときの私は本当に救われたのだ。

マサヒトはいつだってそうだった。
私がちょっとでも暗いとくだらないこと言ったりして、いつも笑わせてくれた。
そうしていると自然に悩んでいたことなど、どうでもよくなっていった。


二人の関係が気まずくなって、ほとんど会話がなくなって。
目も合わさなくなってしまったけど、でもマサヒトはいつも私が作る料理を残さず食べていた。
「美味しい」とは言わなかったけど、でも食べてくれているうちはマサヒトのことを信じようと思った。


浮気のことを知った。

でも...まだちゃんとマサヒトの気持ちを聞いた訳じゃない。

マサヒトに会いたい!
ちゃんと話しがしたい!
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