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知らなくってもいい性
第23章 帰る

「くっ!お前っ!
さんざん身体に快楽を教えてやったんだ。
今さら普通の生活ができると思ってんのか!?」

エレベーターに乗り込もうとすると、へたりこみながらも必死で叫ぶボスの声が聞こえた。
こいつは反省しないのだろうか?

「そんなこと後で考えればいい!!
私はあんな快楽なんて知らなくっても良かった!!

あんたこそ、こんなことして!
普通に考えて犯罪なんだからっ!!

...まだ、私で良かったね。」

捨て台詞を残してエレベーターに乗り込むと扉を閉めた。

さんざん身体を弄ばれたけど、警察に駆け込もうとは思わなかった。
カズキのこともある。

正直なところボスの言葉は確かに引っ掛かる...
日常の生活に戻れるだろうか?

でも、今の私はそれよりもただひたすらに思うことがある。
今はただそれを実行するだけだ!!

...家に帰る!

一階のボタンを押すと、些細な身体の異変に気がついた。

絆創膏はいつ剥がれたのかなくなっていた。
っていうより手首の傷がない!?
治ってる...?

そこまで深くなかったとはいえ、そんなに短期間に治るような傷ではなかったはずなのに。
驚いてもう片方の手と足首も確認したけれど、全て治っていた。
左足につけられていた黒いラインまで消えている!

それに、ここ数日ろくな生活をしていなかったにも関わらずやけに身体が軽く、健康的だった。

おそらくはこの空間のおかげだろう。
さっきから私のことを暖かく包んでいる。


扉が開く。
廊下に出ると見覚えのある風景だった。
エレベーターの横には階段があり、それは一番最初に脱出を試みた際に上ってきた階段だった。

今度は誰に邪魔をされる訳でもなく、ずんずんと進んでいく。

難なく扉が近づいてくる。

あの時、開けられなかった扉を押し広げると眩しい光が目に刺さった。

外だ!

太陽が輝き、すっきりと晴れたいい天気だ。

二歩三歩、五歩六歩と外を歩くとなんとも清々しく爽快な風が身体を抜けていった。

久々の外っていうのはこんなにも気持ちがいいものなんだ!!
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