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秘密にしろよ
第12章 女って…
のんびり仕度をしていたら、結構時間が経ってしまっていた。

「…っ…やべっ…」

俺は財布と携帯をポケットに詰め込むと、急いで家を飛び出した。

江奈が俺の家の最寄り駅まで、車で迎えに来てくれる事になっていた。

駅前に着くと、キョロキョロと車を捜す。

すると直ぐ近くで、クラクションが短く響いた。

スーっと助手席の窓が開いて、運転席からこちらを覗く江奈がいた。

「…麟太郎さんっ!…こちらですっ…」

…………………。

俺は少し固まっていた。

「……?…麟太郎さん?」

と不思議そうに、江奈が更に身体を前のめりにさせて、こちらを覗き込む。

「…あっ…ごめん…」

と俺は助手席の扉を開けると、座席へと座った。

シートベルトを締めながら、もう一度江奈をじっと見つめた。

それに気付いた江奈が、

「……麟太郎さん…見すぎです。化粧…濃いですかね…」

と車を発進させながら、顔を赤らめていた。

「…嫌…凄い…綺麗。」

俺は片言にそう呟く。

「…そんな服…持ってんだ?」

と俺は更に言葉を綴った。

「…いえ…これ…妹のなんです。デートだって言ったら…家まで持って来てくれて…どうせろくな服持ってないでしょって…失礼しちゃいますよね?…持ってないんですけどね。」

と江奈は早口にそう言った。

「…いいじゃん。似合ってるよ。髪も…下ろしてた方が可愛いよ。…眼鏡は?運転…いけんの?」

と俺は江奈の横顔に話しかける。

「…コンタクトです。…麟太郎さんに言われて…買ってみました。」

と微笑んだ。

俺は少し胸が軋んだ。

この子の気持ちに…応えてあげられるだろうか。
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