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秘密にしろよ
第9章 新しい生活
俺はハッとして恭介の方を向く。

優しく寂しそうに微笑む恭介に、

「…江奈は…」

と俺はそれだけを掠れた声で呟いた。

すると恭介は、俺の頬に自分の頬をピタッと着けると、

「…江奈は…女の中では…一番だ。あんなに魅力的な奴は居ない。お前の次に…大切な人だ。」

そして1回だけ大きく息を着くと更に言葉を続けた。

「…でも…いつかはお前を…手離さなければならない。お前は長男だろ?…名前を…残す役目がある。最後にお前が選ぶ相手は…俺じゃない。だから今を…その時が来るまでは…一緒に居てくれないか?」

俺の頬に涙が伝っていた。

恭介の言葉ひとつひとつが、俺の胸を締め付けた。

俺は言葉が出なかった。

一言でも発してしまうと、子供の様に泣いてしまいそうだった。

こんなに…苦しいなら…恋なんてしなきゃ良かった。

江奈に出逢って居なければ、恭介の側に来る事もなかった。

こんなに…苦しくなる事も…なかったんだ。

「…っ…くっ…」

身体を震わせて、声を殺して泣いている俺に、恭介はそっと唇を重ねてくれた。

「…今日のは少し…しょっぱいな。」

と恭介は微笑むと、俺の涙を拭いてくれる。

「…っ…恭…介…っ…くっ…一緒に…居よう。…飽きる…まで…ずっと…っ…一緒に…」

俺は精一杯の言葉を、途切れ途切れに綴る。

「ああ。飽きるまで…抱き合おう。時間の許す限り…ずっと一緒居よう。」

と恭介は俺の髪をクシャっとした。

「…麟太郎…今日俺のとこ来ないか?明日は休みだ。二人で居たい。」

と提案した恭介に、俺は子供の様に大きく頷いた。

…今日…ずっと一緒に居れるんだ。

…身体持つの?…恭介って…何歳なんだろ?

俺は歳も知らない事に、今更気が付いた。

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