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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章  2歳児に惚れた男?



◇◇◇



な……っ

何が、どうなって、こうなって、そうなってるのか。

論理的かつ的確な説明を求めるぞ、私はっ!!



自分を軽々持ち上げた “ひょろお” (ひょろっと長いから)は、物凄い大股で廊下を突き進む。

85cmからいきなり187cmにまで視線が上がり、その高低差に若干ビビっていると “ひょろお” が立ち止った。

どうやらエレベーターを待っているらしい。

「チビ、名前は?」

覗き込んでくる焦茶色の瞳は、少し奥二重ながらも、生命力の強さが感じられる輝いたもの。

「………………」

「な・ま・え。Name。わかる?」

大きな口で問い直してくる “ひょろお” は、どこからどう見ても まだ未成年の若造に見えた。

(山口組の舎弟……では無いな。絶対に)

自分の返事を待つ “ひょろお” は表情豊かで、任侠の男が持ち合わせるどす黒い風貌は、微塵も持ち合わせてはいなかった。

けれど、母であるリーザの事は知っている。

(なんだ……間男か……)

ということは、自分はとりあえず殺されることはないのだろう。

「……ココ……」

消え入りそうな声で、ようやく名乗れば。

「は? ココ……? あ~~、あいつ、シャネル好きだったけか……」

(ええ、お察しの通りでがんす)

微妙な表情で笑う “ひょろお” に同意していると、エレベーターが到着し。

乗り込んだ “ひょろお” は、パネルを操作しながら続けた。

「俺は龍一郎。今日からココの “ご主人様” だよ」

その意味不明な自己紹介に、2歳児の顔が途端に引き攣る。

「……はひ……?」

(な、なんか、この人……。さっきから中二病みたいな事ばっか、言ってるけど……)

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