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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章  2歳児に惚れた男?



『おい。お前は今から “俺の物” だ』

『決めた。お前は “俺の女” にするぞ』

『心配するな。俺がお前を絶世の美女に育ててやるからな。はっはっはっ』



2歳児の中身――酸いも甘いも噛み分けた(?)アラサー女からしたら、

龍一郎の一連の発言は「きもっ」と、ドン引きするものばかりで。



『俺が守ってあげる。こんな所からは、一刻も早く逃げ出さないと』



その言葉を信じ、咄嗟に頼ってしまったが。

本当にこいつに着いて行って、大丈夫なのだろうか?



そう警戒し始めた時。

軽い到着音を立てながら、エレベーターは目的階に辿り着いた。

また大股で先を急ぐ龍一郎の腕の中、難しい顔をしていると。

バーンと荒っぽく開けられた扉の向こうから、爆音と爆風が襲ってきた。

「……~~~っ!?」

(な、な、なんじゃこりゃ~~っ!?)

夜の帳が降りた屋上に、煌々と照らし出されていたそれに、ヘーゼルの瞳がまんまるになる。

「坊ちゃま! そちらのお子さんは?」

爆音に負けぬ様、大声で問うてくる操縦士らしき男に、

「あ~~、俺の女!」

またサムイ紹介をする龍一郎。

そして有無を言わさず乗せられたのは、そう――ヘリコプターだった。

「……っ にゃ、にゃんでっ!?」

思わず零れた戸惑いも気にせず、龍一郎は小さな身体を抱っこしたままシートベルトを装着し。

それを確認した操縦士は間髪入れず、機体を上昇し始めた。

「ぎっ ぎゃああああ~~っ!?」

桃色の愛らしい唇から、愛らしさには程遠い悲鳴が放たれる。



言っとくけど、前世でも現世でもヘリなんて乗ったことないよ!?

飛行機はともかくヘリなんて、乗らずに天寿を全うする人間のほうが多いでしょ!?

こんなけったいなモノに乗って、何処行くのさ!?

おい! 

“ひょろお” 改め 龍一郎とやら!


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