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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章 2歳児に惚れた男?
「まあまあ~、サトちゃん。そう言うなよ~。ほら見ろ、可愛いだろう? なんたって美女が多いと有名な “ウクライナの血” が入ってるんだからな~」
“某製薬会社のオレンジのゾウ” と同名の男の鼻先に、いきなり ぶらんと吊らされたココは、
とりあえず にたあ と笑っておいた。
何でって?
じゃあ、初対面の男(しかも龍一郎より まともそう)を、睨み上げれば良かったのかよww
「はぁ……。お嬢様、お名前をお伺いしても?」
溜息と共に、幼女に対して敬語で問うてくる使用人。
「……コ、ココ……」
「母親がシャネラー “だった” からな~」
主の補足を無視した “サトちゃん” 。
「ココ様。レディーにお年をお聞きするのは大変心苦しいのですが、お聞かせ頂けます?」
「……2ちゃい……」
本当は「2歳と11ヶ月です」と答えたいところだが、2歳児がそんな厳密に言及すれば確実に怪しまれる。
小さな顔の前、短い指を2本立てながら答えたココに “サトちゃん” の表情は更に曇った。
黒スーツの内ポケットからスマホを取り出した男は、ポッポッピッ とどこかへダイヤルを押すと、滑らかな口調で告解を始める。
「夜分遅くに恐れ入ります。警察でございますか?
わたくし御手洗(みたらい)家の家宰を務めるものにございます。
この度は我が主が “未成年者略取・誘拐” という、最低最悪の犯罪に手を染めてしまいまして――」
「わぁあああああっ!? サトちゃ~~んっ!?」
そんなコントを繰り広げる主従を、だだっ広い玄関ポーチに降ろされたココは、2歳児らしからぬ胡乱な瞳で見上げていたのだった。