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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章  2歳児に惚れた男?

□の字を描く屋敷の左側は、どうやらプライベート空間らしい。

白い漆喰の壁と、所々に多用された尖頭アーチの装飾が印象的な部屋は、だだっ広いリビング。

壁際に沿い、コの字にぐるりと配されているのは、

「一体 何十人が会して、ここでお茶をするんだ!?」

と、思わず首を傾げてしまいそうになる程、座面の低い長椅子が連なり。

そして、がらんと空いた部屋の中心には、細やかなモザイクタイルの石床の上、趣向を凝らしたカーペットが敷かれ。

そこに下ろされたココは、大小 色鮮やかなクッションに埋もれる様におっちんした(関西弁:座る)。

(……こういうの、なんていうんだろ……? エキゾチックな……モロッコ風?)

丸い頭をきょろきょろと巡らし、興味津々のココに対し。

大人達は勝手に話を進めていた。

「ココ様、夕食は摂られたのでしょうか?」

「ん~? ああ、まだだと思う」

「では、鬼瓦さんにお願いして参りましょう。ココ様は食べられないもの等、ございますでしょうか?」

サトちゃんが龍一郎に確認したその言葉に、何故かココは ぱっと2人を振り仰ぐ。

(お、鬼瓦さん ですと……!?)

そんな おどろおどろしい名字の使用人が、この屋敷に仕えているのだろうか。

思わず頭の中で “オードリー春日の持ちネタ「鬼瓦」” を思い出したココにも、主従は気付く事は無く。

「全然、分かんない。だって、ついさっき、見初めたばっかりだからな~」

「………………」

龍一郎のその能天気な返答に、問うたサトちゃんは何故か黙り込んでしまった。

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