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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章 2歳児に惚れた男?
そこへ、先ほどまで世話になっていたヘリの操縦士が戻って来る。
「ツバサ。鬼瓦さんに、消化の良くアレルギー食材を含まないディナーを、用意して貰って下さい」
使用人の長・家宰のサトちゃんの指示に、操縦士もとい “ツバサ” は「イエッサー!」と、略式敬礼をして出て行き。
「坊ちゃまは、私と一緒にこちらへ」
ギロリと黒縁眼鏡越しに睨みを利かせたサトちゃんが、主へと詰め寄るが。
「え~~? 俺もココと一緒にディナー食べる~」
まるで駄々っ子の龍一郎に、ココは “誰かさん” の堪忍袋の緒が切れる音を聞いた。
「~~~っ いいですから、とっとと来て事情を説明して下さい!」
龍一郎より10cm程低いサトちゃんが、主の耳を摘み上げて引っ張り。
「い゛ででっ!?」
賑やかに騒ぎながら、リビングを後にした大人達。
いきなりシーンと静まった だだっ広い空間に落ちたのは、
「ふはぁ……。なんだか、にゃ~……」
そんな疲れを滲ませた、ココの本心だった。
しばらくし、操縦士 兼 使用人のツバサは、ディナーを運んで来てくれたが。
知らない場所で、知らない大人達に囲まれ。
他にも、ドタバタだった1日も響いてか。
ココは結局3口くらい口にしただけで、スプーンを止めてしまった。
「ん? もういいのか?」
どうやら体育会系らしいツバサは、短髪が爽やかな好青年だった。
小さな顔にしょぼんとした表情を浮かべたココは、目の前の美味しそうなポトフに視線を落とす。
「……ごめんなちゃい……」
「いいよ、気にするな。もう食べられないんだな?」
こくりと頷けば、握ったままだったスプーンを取られ。
そして俯いていた後頭部に、大きな掌が添えられたかと思うと。
上を向かされたココは、ちっちゃな唇をナプキンでフキフキ拭われてしまった。
「これ、片してくるから、良い子で待ってるんだぞ?」
そう言い置いて、配膳した時とほぼ変化していないディナープレートを手に、立ち去って行くツバサ。
体格の良い後ろ姿を瞳だけで追っていたココだったが、その意識はそこで途切れた。