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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章 2歳児に惚れた男?
頭の上から大きなバスタオルを被らされ、ぼへ~と ふ抜けていると。
「申し訳ありませんが、午前中はこちらをお召しになって下さい。急遽作りましたので、愛想もそっけもない衣服ですが」
そう言ってサトちゃんが差し出してきたのは、さらっとした生地で作られた夏用ワンピだった。
「わあ……っ」
丸首で胸から下はギャザーが寄せられ、Aラインになっていて。
袖も可愛らしく、ひらひらとした飾りが付けられているそれは、言われなければ既製品と思うくらいの出来栄え。
(とんでもないっ こんなのさっと作れちゃうなんて、執事(?)って何者さ?)
「すごぉ~~い」
大きな瞳を輝かせてワンピを眺めていると、サトちゃんに頭からそれを着させられた。
サイズもぴったりで、更に感心していると。
「如何せん、麓から物資が届くのは早くても昼ですので。それまではご容赦下さい」
「……ふぁ……?」
(え゛……。今、この人 “麓” って言った? ってここは、お山ってことかい?)
昨夜、ヘリで拉致(?)られた時は、正直 外を眺めている余裕など無く。
今更ながらにそんな知りたくない事を知ってしまったココは、小さな肩を竦め、所在無げな表情を浮かべたのだった。
その後。
昨夜も案内された、モロッコ風の居間に通され。
絞りたてオレンジジュースを飲みながら、ココは自分のこれからの身の振り方を説明された。
要約すると――
昨夜、御手洗(みたらい)家の顧問弁護士を叩き起こし、調べさせたところ。
ココは出生届も出されておらず、もちろん戸籍も無かった。
母親であるリーザの行方は知れず、昨夜の内に汐留のマンションは証拠隠滅がなされ、現在はもぬけの殻。
そして、
生後2ヶ月から始めるべきワクチン等の予防接種は、恐らく受けていないであろうから、後日主治医に調べさせるとのことだった。
「………………」
(つまり、私は2歳11ヶ月にして天涯孤独の上、国がその存在を認めていない人間……)