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いろはにほへと ~御手洗家の10の掟~
第1章 2歳児に惚れた男?
(そういえば……。ママも……。ママも毎食、トマトとチーズのスープ、出してくれてたや……)
てっきり、暖かなスープを食前に出すのが、彼女の祖国の風習なのだとばかり思っていたが。
「………………」
ネグレクト(育児放棄)気味だったけれど、食事や普通の生活は面倒を見てくれていたウクライナ人の母。
(「愛されてはいない」と、期待するのは諦めていたけど……。本当は、こんなに気を付けて、くれてたんだ……)
その真実に気付くと、涙が堪えられなくなって。
「ココ!? ど、どした~?」
2歳の幼女が声も上げずに、ぼろぼろ涙を溢す様子に、龍一郎が焦って席を立ち。
「にゃ、にゃんでも……っ」
慌てて拳でゴシゴシする小さな両手を、龍一郎が止めさせた。
「鬼瓦さんの顔が、怖すぎたのか!?」
「ち……っ ちがうぅ~~っ」
(や、やめろ~~っ!? 鬼瓦さん、ものごっつい傷付いた顔、してるじゃないか~!)
腰かけていた椅子から ひょいっと持ち上げられ。
抱き込まれた広い胸に、ココは泣いてしまった羞恥から目を逸らす様に、ぎゅうと縋り付いた。
「あ~……。色々あって、大変だったな?」
「ホッとされたのかも、知れませんね……」
囁かれた2人分の暖かな気遣いの言葉に、更に涙腺が刺激される。
(あ゛~~っ 泣き止め、自分! 泣き虫キャラじゃ、無い筈だぞ~っ!?)
「1人で たくさん頑張ったな? ココ、良い子だったね。でも、もう大丈夫。 “未来の旦那様” の胸で、たんとお泣き~」
そんなおちゃらけた言葉で、抱き締めてくれる龍一郎に、
「……“パパ” だもん……っ ぐすっ」
ココは容赦せずに、そう突っ込んだのだった。
「……“パパ” の胸で、たんとお泣き……」
律儀にそう言い直した龍一郎に、山田は「ふはっ」と吹き出し。
何の事やら分からぬ鬼瓦料理長は、恐ろしい表情のまま、小首を傾げていたのだった。